【退院日当日】結局のところ訪問看護に入れるのか?

訪問できる?できない?

退院したその日に訪問看護に入れるかどうか。
現場でも意見が分かれることがあり、ネットで調べても記載内容が違う。。。とドツボにはまってしまった方も多いのではないでしょうか。

とある訪問看護ステーションさん。
病院から「〇〇さんの退院が3日後に決まりました!急ですが、退院日から訪問看護に入れますか?」
と言われた。ステーションは「退院日は訪問ができないので4日後からいきます」と返答した。
病院は、「以前別の訪問看護ステーションに尋ねた際は行ってくれたんだけどなぁ」と戸惑った。

皆様はこのような経験ありませんでしたでしょうか?
本日は退院日の当日に訪問看護に入ることができるのかについて見ていきましょう。

訪問看護に「入れる」をどう捉えるか

これまで現場で感じてきたことは、訪問看護に「入れる」を、
「訪問すること」なのか、
「訪問看護費を算定できること」なのか、
「加算を算定しても良いこと」なのか、
これらの捉え方が違うことで混乱や意見の相違が生まれていることが多々あると気づきました。

まず「できる」に関して、それ自体は可能です。いわゆる「ボランティア」の形であれば、制度や保険に制限なく訪問に行くことはできます。実際にこのようなデータがあります。

厚生労働省 社保審-介護給付費分科会 第182回資料3より抜粋

退院日に訪問を行なっていながら、算定を得ることなく訪問しているステーションが30%を超えている事実があるのです。
しかし、これは医師の指示に沿っているのか、責任を誰がどのようにとるのか曖昧になることが考えられます。また、退院時に限ったことではありませんが、「ボランティア」を行うことによって、「この訪問看護ステーションは無料で行ってくれた」「このステーションは行ってくれない」など、本来規定に沿って実施しているステーションが悪のように捉えられてしまう恐れもあります。
では、退院日当日に訪問看護が「できる」とはどのような解釈なのでしょうか。
それは「算定ができる」という場合です。

原則は、「算定できない」

厚生労働省は、退院当日の算定要件として、原則「算定できない」と示しています。原則は、「できない」が正解ですが、保険によって条件を満たせば算定が可能となります。

その前に訪問看護の算定について簡単に押さえておきましょう。
訪問看護の報酬は次のようになっています。

基本報酬(医療保険では訪問看護基本療養費)+各種加算

細かく言えば体制の療養費などもありますが今回はひとまず触れないとして、基本報酬は訪問することで毎回算定しているものになります。
ステーションによっては、この基本療養費を算定することを「1件の訪問」と計算しており、これが算定できない場合、「訪問できない」と捉えているケースもあります。

これらを踏まえた上で、保険別に「算定ができる」のかを見ていきましょう。

「算定できる」条件(医療保険)

  • 厚生労働大臣が定める疾病等(別表7)に該当する
  • 厚生労働大臣が定める状態等(別表8)に該当する
  • 退院日に訪問看護の必要性が認めている

上記のいずれかに該当する場合、「退院指導支援加算」を算定することができます。
加算になりますので、次の訪問時に基本療養費を算定する場合に併せて算定する形となります。

加算については、

  • 退院日から有効な指示書が発行されている
  • 事前に本人または家族への説明と同意
  • 計画書への立案
  • 退院日の訪問時に必要な指導を行うこと(准看護師は除く)
  • 指導内容の記録

が必要であることを忘れないようにしましょう。ポイントは、基本療養費は算定できないということです。

「算定できる」条件(介護保険)

  • 厚生労働大臣が定める状態等(別表8)に該当する
  • 主治医が必要と認めている

上記のいずれかに該当する場合、「基本報酬」を算定することができます。
介護保険では、条件に該当すれば加算ではなく、基本報酬が算定できるということになります。
ちなみに介護保険の退院日における訪問看護については、近年改訂が繰り返されています。

それまで:「別表8に該当する者以外は入れませんよ」
2021年改訂:「主治医が認めた場合にも入ってもいいですよ」
2024年改訂:「退院日に入ってくれるならば加算もつけますよ」

退院直後からの状態観察および、円滑なサービス体制の構築のために退院日からの訪問看護の必要性が高まっているということが分かりますね。

似ているが違う「退院時共同指導加算」

名前は似ていますが、退院当日の訪問看護とは全く違う加算として、「退院時共同指導加算」があります。
この加算は、病院から退院する前に、病院と訪問看護ステーションが連携して、退院後の在宅療養に関する指導を行った場合に算定できます。

  • 病院等の医師もしくはその施設の従業者と共同して療養上の指導を行う。
  • 退院時共同指導の内容を文書で作成し、保管と本人または家族に提供する。
  • 退院後に訪問看護を行う。
  • 退院時共同指導の内容を訪問看護記録書に記録する。

上記の要件を満たすことで算定できます。

退院時共同指導加算は、医療保険と介護保険で算定できます。それぞれ、算定できる単位が異なります。
医療保険:8,000円
介護保険:600単位

ポイントは、退院前に病院において、共同で指導を行うものであり、退院日当日の訪問看護とは異なるということです。
なお、「退院指導支援加算」と「退院時共同指導加算」は同時に算定することも可能です。

以上、参考にしてくださると幸いです。

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