生活のそばに医療があるということ〜相談員として見てきた訪問看護の力〜

この「くまもとケアポータル」のお手伝いができるならばやりたい!と連絡をくださった高村さん。
地域連携・退院支援の部門で相談員をしていた実務経験から、その仕事内容や、相談員目線から見た訪問看護について語ってくださいました。
訪問看護の利用を検討されているご利用者様・ご家族様にとってはもちろんのこと、現場の訪問看護従事者にとっても改めて勉強になる、そして、グッとくる内容です。
ぜひ、読んでみてください!

くまもとケアポータル 内村

この記事を書いたひと:Webデザイナー 高村花菜🌷

 私はこれまで、病院で相談員(ワーカー)として、主に後方支援に携わってきました。
 手術や治療後の転院先や療養先の調整、退院後の生活に関する相談、医療費や経済的な不安、病気と仕事の両立についての悩みなど、入院中の患者さんや外来通院中の方、そのご家族、地域の関係機関から、さまざまな相談を受けてきました。
 高齢の方や独居の方、身寄りのない方、難病やがんを抱える方、小児の患者さん、経済的に困難な状況にある方など、背景は一人ひとり異なり、相談内容も複雑に絡み合っていることが多くありました。

 “限られた社会資源のなかでどのような支援がその方にとって最善なのか”を、医師や看護師をはじめとする医療チームと情報を共有しながら考え、調整していくことが、相談員としての大きな役割でした。

 そうした支援の中で、在宅で療養することが選択肢となる方も多く担当してきました。
 医療行為が必要な方、独居や高齢世帯の方、難病やターミナル期の方など、さまざまな状況において、訪問看護が関わることで在宅でも安心して生活を続けられる場面を数多く見てきました。

 病院と在宅がつながることで生活の様子が見え必要な支援を切れ目なく届けることができます
 訪問看護は、患者さんが望む「その人らしい生活」を支えるために、そっと寄り添い、安心を届けてくれる存在だと感じています。

 このコラムでは、これまでの相談員としての経験を振り返りながら相談員の立場から見た訪問看護についてお伝えしていきたいと思います。

 相談員は、直接的な看護やケアを行う立場ではありません。
 患者さんやご家族が病気や治療をきっかけに抱える、さまざまな不安や困りごとを一緒に整理し、安心して療養生活を送れるよう支える役割を担っています。

 相談が始まるとき、まず大切にしているのは「何が一番困っているのかを丁寧に聴くことです。

 医療の問題だけでなく、生活のこと、仕事のこと、経済的な不安、家族関係など、背景は一人ひとり異なります。相談員は、そうした情報を生活者の視点で整理し、地域で利用できる制度やサービスと照らし合わせながら、課題を一つずつ見つけていきます。
 その上で、医師や看護師、院内他職種、地域の関係機関と情報を共有しながら、患者さんやご家族の意向を確認し、無理のない支援の方向性を検討していきます。

 医療費の相談、退院後の療養先の調整、介護保険や福祉制度の案内、仕事との両立支援など、関わる内容は多岐にわたりますが、どれも「その人らしい生活を続けるため」に必要な支援です。

 私自身、相談員として働くなかで意識していたのは、できるだけ一つの立場に偏らずさまざまな視点から物事を見ることでした。

 患者さんの立場、ご家族の立場、在宅側の立場、医療者や行政の立場。それぞれの思いを想像しながら、患者さんの気持ちを代弁し、関係者が同じ方向を向いて支援できるよう調整していくことが、相談員の大切な役割だと感じています。
 正解が一つではないなかで、患者さんの想いに一番近い選択を探していくことが相談員の役割だと思っています。

 病院で相談員として関わる中で、退院を前にした患者さんとご家族の思いが、必ずしも一致しない場面に何度も立ち会ってきました。

 「できるだけ家に帰りたい」という患者さんの思いと、「自宅での生活は不安だ」というご家族の思い。その間で、どこに折り合いをつけていくのかは、とても難しい課題でした。

 何が解消されれば不安が和らぐのか、どこまでなら現実的に可能なのか。患者さんご本人が担えること、ご家族が担えること、生活スタイルや住環境も含めて整理しながら、退院前カンファレンスで何度も話し合いを重ねていきました。

 それでも、「実際に帰ってみなければ分からない」という思いと、「このまま帰ったら困ってしまうのではないか」という思いが、常に頭の中にありました。

 私は、患者さんやご家族が今どのような気持ちでいるのかを、事実として在宅側に伝えることを大切にしていました。「以前はこのように感じておられましたが、今はこういうお気持ちです」と、気持ちの変化も含めて共有することで、支援が一方的にならないよう心がけていました。どのような意向で在宅生活を選ぼうとしているのか、その背景を丁寧に伝えることが、在宅支援につながる第一歩だと感じていたからです。

 また、中年層の患者さんの場合、訪問看護の費用負担を理由に訪問回数をできるだけ少なくしたいと希望されることも少なくありませんでした。「自宅に人が来るのは抵抗がある」「知らない人を家に入れたくない」と話される方も一定数いらっしゃいました。

 訪問看護について繰り返し説明しても、「費用がかかるなら利用しなくていい」と断られることもありました。強制できるものではないと分かっていながら、医療の視点が生活の中に入らないままで本当に大丈夫だろうか、と悩むことも多くありました。ただ、訪問看護を初めて知る方にとっては、それがごく自然な反応なのだと、次第に思うようになりました。

「訪問看護って何をしてくれるんですか?」と聞かれたときに、「身近で体調を気にかけ、迷ったときに相談できる存在です」とお伝えすると、「それなら安心だね」「すぐ相談できるのは心強いね」と話してくださる方も多くいらっしゃいました。

 病院だけでなく、生活のそばに医療の視点があること。その安心感が、在宅で暮らすうえで大きな支えになると現場で感じていました。

 相談員として病院で勤務していた頃、訪問看護の存在はとても心強いものでした。

 病院では、入院中や外来受診時の限られた時間の中でしか患者さんの状態を把握することができません。訪問看護が入ることで、病院では見えにくい生活の場での実際が見えてきます。

 在宅に医療の視点が入ることで、病状の変化だけでなく、生活の中で起こりうるリスクや体調の小さな変化にも気づいてもらえるようになります。「この状態なら、そろそろ受診を検討した方が良いかもしれない」「少し様子を見ながら、こういったケアを続けてみよう」など、日常の延長線上で医療的な判断がなされることは、患者さんやご家族にとって大きな安心につながっていると思います。また、トラブルや何かあったときにすぐに相談できる医療職が身近にいるという安心感は、患者さん本人だけでなく、ご家族の心理的な負担を大きく軽減していたように感じます。介護が長期化するほど、身体的な負担に加えて精神的な不安も積み重なっていきます。その中で、訪問看護師がそばで伴走してくれる存在であることは、ご家族にとっても「一人ではない」と感じられる大きな支えとなっています。相談員の立場から見ても、訪問看護師から家庭での様子や具体的な変化を共有してもらえることで、必要なサービス内容の調整や、新たな支援の提案がしやすくなります。「在宅ではこのようなケア方法があります」といった現場ならではの具体的な提案をいただけると、より現実的で、その方の生活に合った支援につなげることができるため、病棟や外来の看護師も在宅でできるケアに合わせて個別的なケアや指導をすることができ、訪問看護師からの助言は病院側にとっても統一したケアを提供できるきっかけになっていました。訪問看護は、患者さん・ご家族・医療者それぞれにとって、安心を支える欠かせないパートナーだったと感じています。

◯在宅で暮らすという選択を支えたケース 皮膚がんを患い、独居で軽度の認知症のある患者さんを担当しました。他医療機関からの紹介で、病状はすでに治療が難しい進行性の状態であり、今後は緩和ケアに移行する方針となっていました。ご本人と、キーパーソンであるご親族を交えて説明を行い、今後の治療方針について理解を得たうえで、緩和ケア外来への通院を検討することになりました。日常生活動作は比較的自立されていましたが、独居であること、病識が乏しいこと、皮膚からの出血が続いていたことなどから、退院後の生活には多くの不安要素がありました。介護保険は未申請で、生活保護を受給されていたため、保護課や地域包括支援センターとも連携を図りながら、退院と同時に訪問看護を導入する方向で調整を進めました。幸いにも、自宅近くで対応可能な訪問看護ステーションがすぐに見つかり、退院直後から訪問看護師が関わってくださいました。受診の付き添いや、他医療機関の緩和ケア担当者との情報共有を行いながら、医療と地域のつながりが途切れることなく継続されました。結果として、ご本人の「できる限り自宅で暮らしたい」という思いを、訪問看護が中心となって支えてくださったことが、とても印象に残っています。 ◯家族と過ごす時間を大切にしたケース 脳腫瘍の終末期にある青年期の患者さんを担当しました。下肢麻痺が進行し、寝たきりとなった現実をなかなか受け入れられず、「まだ治療を諦めたくない」という強い葛藤を抱えておられました。医師からの説明に納得されない場面もありましたが、ご家族と自宅で過ごす時間を大切にしたいという思いも、ご本人・ご家族の中で共有されていました。話し合いを重ね、訪問診療と訪問看護を導入し、万が一の際にはすぐ入院できるバックベッドを確保したうえで、自宅退院を選択されました。仕事が生きがいだった患者さんは、「もう一度立って仕事ができるようになりたい」と、何度もその思いを口にされていました。ご家族は在宅での介護に強い不安を抱えておられたため、訪問診療医、訪問看護師、ケアマネジャーと何度もカンファレンスを行い、退院前には自宅訪問を実施して住環境や動線を確認していただきました。また、経済的な不安も大きかったため、高額療養費制度や傷病手当など、利用可能な社会保障制度についても情報提供を行いました。退院後しばらくして在宅の様子を伺った際、「不安はあるけれど、在宅の医療チームが支えてくれているおかげで、家族で過ごす時間を持てています」という言葉を聞き、胸がいっぱいになったことを今でも覚えています。

 訪問看護というと、「医療的な処置が必要になってから利用するもの」と感じる方も多いかもしれません。けれど実際には、訪問看護はもっと身近で、日々の不安や迷いを相談できる存在でもあります。ご自宅での生活の中では、「このまま様子を見ていて大丈夫なのだろうか」「病院に連れて行くべきか判断がつかない」「最近少し様子が違う気がするけれど、気にしすぎなのかもしれない」など、小さな不安が積み重なっていくことがあります。その多くは、誰かに相談できれば安心できることでもあります。訪問看護師は、そうした判断に迷う場面で、身近に相談できる専門職です。些細に思えることでも、「こういう状態なのですが、どうしたらいいでしょうか?」と気軽に相談していただいて構いません。必要に応じて受診のタイミングを一緒に考えたり、生活の中で気をつけるポイントを伝えてもらえることで、不安が少しずつ和らいでいきます。「まだ利用するほどではないかもしれない」と思う時こそ、訪問看護という選択肢があることを知ってほしいと思います。迷ったときに一人で抱え込まず、相談できる味方がそばにいること。それ自体が、在宅での生活を支える大きな安心につながると感じています。

病院で相談員として多くの支援に関わる中で、私は何度も訪問看護師の方々に助けられてきました。患者さんやご家族のそばで日々の変化に気づき、医療と生活をつなぎながら支え続けてくださる姿は、病院側にとってもとても心強い存在でした。在宅での生活には、不安や迷いがつきものです。けれど、訪問看護師が関わることで、「困ったときに相談できる相手がいる」「一人ではない」と感じられる場面を、私は数多く見てきました。その積み重ねが、患者さんやご家族の安心につながっていたように思います。訪問看護は、特別な状況になってから利用するものではなく、病気になったときに、生活を支える選択肢の一つとして考えていただきたい支援の一つです。このコラムが、訪問看護を知るきっかけとなり、必要なときに「相談してみよう」と思い出してもらえる存在になれば幸いです。

この記事を書いたひと:Webデザイナー 高村花菜🌷

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