熊本 CKD最新事情|予防看護で守る腎臓と健康寿命

 熊本は全国47都道府県の中で、人口100万人あたりの透析患者数がトップであり、透析導入になった背景として、糖尿病性腎症の割合が最も多いという調査結果が出ています。

 CKD(慢性腎臓病)は新たな国民病と言われており、熊本ではCKDの早期発見と重症化予防に向け、医療機関・看護職・地域行政が連携した取り組みが進んでいます。

 この記事では次のようなことについて解説しています。

・熊本におけるCKDの最新事情とは?
・CKDによる合併症と予防対策は?

 熊本におけるCKDの最新事情と予防対策、そして個人が生活に取り入れやすい対策まで詳しく解説します。

この記事を書いたひと:shannmama

熊本におけるCKDの現状と背景

 CKDとは腎機能が長期間にわたり低下する状態で、自覚症状が乏しいまま進行することが多い病気です。

引用:NPO法人日本腎臓病協会HPより

 2024年、日本のCKD患者数はおおよそ2000万人いると言われており、これは成人の5人に1人の割合です。2005年には推計1,330万人とされていたため、20年の間に大幅に増えていることがわかります。

熊本がCKD対策事業を開始した背景

 熊本がCKD対策事業に取り組み始めたのは、次のようなことが背景にあります。

(1) 熊本市は、人工透析者数の割合が高い水準にある
(2) CKDが死因の上位を占める心血管疾患の重要な危険因子であることが判明
(3) CKDの予防・治療が可能になった
(4) 腎疾患は自覚症状がなく、潜在患者が数多くいることが予測される(12.9%)「CKD診療ガイド2009」より

引用:熊本市HP

 熊本では人工透析患者数が全国でも上位に入っており、CKD対策事業は、新規人工透析患者数を減らすことも期待されています。

 CKDの治療としては、生活習慣の改善や薬物療法、食事療法などがあります。
 熊本におけるCKD対策は、個人の生活習慣改善と、医療・保健の連携の両輪で進められる必要があります。

熊本で進むCKD予防看護の取り組み

予防看護は早期発見生活指導継続的なフォローの三つを軸に展開されます。

①早期発見:健康診断での尿検査や血液検査で、腎機能をスクリーニングします。

②生活指導と受診勧奨:異常があれば、看護師や保健師が生活指導や受診勧奨を行います。地域の検診会場や保健センターで、塩分や体重管理や薬の飲み方について具体的な指導を提供し、患者さんが自己管理できるよう支援します。

③継続的なフォロー:受診調整後は、病院や診療所への通院を行い、腎機能低下に伴い生活状況に困難が生じた場合、地域包括支援センターと連携することもあります。

 受診後の薬の管理や体調管理、日常生活動作の支援目的で、訪問看護を利用する例もあります。

 またCKDの進行を抑える目的で、腎機能中等度低下者を対象としたCKD予防教室を開催している医療機関もあります。

 このように、熊本では様々な関連機関や団体が、それぞれの立場での取り組みやお互いに連携してCKD予防対策に取り組むことで、新規の人工透析導入者数の減少や透析導入の平均年齢の上昇といった成果が現れています。

CKDによる合併症と予防対策

 CKDは高い割合で心血管疾患を合併することが知られています。
 心血管疾患は、高血圧や糖尿病、高脂血症と密接に関連しており、いわゆる生活習慣病であるこれらの疾患を、適切に管理することが合併症予防の第一歩です。

熊本における生活習慣病の現状

 熊本では、生活習慣病のリスク保有者が全国平均を上回っているという結果が出ています。

引用:ACTION!健康経営より

 特に、男女ともに空腹時血糖、HbA1cの数値が全国平均よりも高く、糖尿病のリスク保有者の割合が高いのが特徴です。

 熊本では、糖尿病性腎症からの透析導入となる人が多いのが現状です。
 熊本県においては、県の計画「第8次熊本県保健医療計画」(令和6年度〜11年度の5か年) においても糖尿病対策が記されています。
 合併症予防対策の具体的な行動について、次の章で見ていきましょう。

CKDの合併症予防対策

 CKDの合併症を予防するには、健診や人間ドックで血圧・血糖・脂質を定期的にチェックすることが大切です。

 「第8次熊本県保健医療計画」(令和6年度〜11年度の5か年)においても、糖尿病対策として発症予防・早期発見がうたわれています。

 発症予防と早期発見のために、健診や人間ドックを受けることは非常に重要です。

 ここからは、健診のひとつである特定健診に注目して、見ていきましょう。

Q:特定健診の対象者と目的は?
A:40〜74歳の公的医療保険加入者を対象とし、メタボリックシンドロームに着目して生活習慣病の予防・早期発見・重症化予防を目的とした健診です。

Q:健診に費用はかかる?
A:年に1回、年度始めに受診券が送られてきますので、そちらを使用すれば無料で特定健診を受けることができます。

Q:どんな検査項目があるの?
A:身体計測、血圧、血液検査(脂質、血糖、肝機能)、尿検査(尿糖、尿蛋白)、問診といった項目があります。

Q:どこで特定健診を受けることができるの?
A:受診券に同封されている、特定健診実施医療機関一覧を参考にしていただき、ご自身で予約を取っていただく必要があります。

 では実際の特定健診の実施率はどのくらいでしょうか。
 熊本での特定健康診査(特定健診)の実施率は以下です。

引用:ACTION!健康経営より

 実施率は年々伸びてはいるものの、熊本は全国平均を下回っており、目標値としている70%には届いていない状況です。
 生活習慣病の早期発見の第一歩ですので、職場の健診や特定健診は毎年必ず受けるようにしましょう。

 看護師は継続的な生活指導や受診勧奨検査結果のモニタリング服薬アドヒアランスの確認といった支援を通じて、発症予防に努めます。

CKD予防に効果的な生活習慣改善

 食事管理はCKD予防の基本であり、特に減塩が重要です。加工食品の塩分を減らす工夫や、家庭での調味料調整が効果的です。

 カリウムやリンの摂取管理は病期によって異なるため、医師や栄養士、看護師と相談しながら個別に調整する必要があります。
 水分は過不足なく摂ることが基本で、腎機能の状態に応じた指導が重要です。

 また食事管理と同じくらい重要な行動が、運動です。適度な有酸素運動と筋力維持は、血圧や血糖コントロールに寄与します。また体重管理は腎臓への負担軽減につながります。

 CKDの指摘を受けたら、まずは生活習慣を見直すところから始めると良いでしょう。

熊本県内で利用できるサポートと情報

 熊本県や市町村では、啓発イベント等の開催や健診受診勧奨の実施が行われており、病院やクリニックではCKD予防のための講演会が開催されてます。

 地域の患者会やサポートグループは情報交換や心の支えとして有効で、自治体の保健センターやかかりつけ医を通じて参加情報を得られます。
 医療費助成や生活支援制度についても自治体窓口で相談できますので、早めに利用方法を確認すると安心です。

まとめ|CKDを予防し健康寿命を延ばすために

・熊本は人工透析者の割合が、全国的にみて高い水準にある
・CKDは自覚症状がないまま進行するため、健診などで早期発見に努めることが重要である
・CKDは早期発見し生活習慣を見直すことで、発症を予防することができる
・熊本では様々なCKD予防対策に取り組むことで、新規の人工透析導入者数の減少や透析導入の平均年齢の上昇といった成果が現れている

 熊本は人工透析者の割合が、全国的にみて高い水準にあり、透析にいたる前にCKDの段階で予防することが熊本における重要課題でした。

 そこから様々な対策に取り組んだことで、透析治療への移行を遅延・回避することにつながり、日常生活の制限なく暮らすことができる期間の延伸につながっています。

 腎臓の健康は日々の習慣で守れる部分が大きいため、まずは年に1回の健診からぜひ始めてみましょう。早い段階から生活習慣を見直す行動が、あなたの健康寿命を支えます。

この記事を書いたひと:shannmama

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