8000件の訪問看護経験者が語る!訪問看護利用のメリット5選

訪問看護の何がいいの?

「結局、訪問看護で何をしてくれるのか」これまで何度も尋ねられた言葉ですが、改めて聞かれると難しい質問ではないでしょうか。「健康状態の観察」「服薬管理」「緊急時の対応」どれも確かに合っていますが、その役割がどのような効果をもたらすのか。
 北は山鹿から南は水俣まで、熊本県内のべ約8000件の訪問看護に入ってきた私が、実際に訪問看護師として感じたメリットを5つに厳選してご紹介いたします。

結論

  1. 医療の質を落とすことなく在宅生活を送ることができる
  2. 治療の方針を明確に共有することができる
  3. 病院や地域の支援者も生活状況を正確に把握することができる
  4. ご家族の不安も軽減することができる
  5. 今後、何かあったときに助かる

①医療の質を落とすことなく在宅生活を送ることができる

 病気の発症はもちろん怖いことですが、その後注意すべきなのは”再発”です。脳卒中も、心筋梗塞も再発を繰り返すことで予後は不良となっていきます。最初に発症したということはリスク因子を既に持っているということであり、初発よりもさらに厳重にコントロールしていくことが求められます。それは精神面でも言えることであり、軽度抑うつ気分からストレス因子が解消されずに再発し、様々な合併症を引き起こしてしまいます。

 入院中はいつでも体調変化に気づいてもらえる環境ですが、自宅に帰るとそうはいきません。医療者でもない限り、退院指導内容を十分に理解して自己管理し、異変に気づいて対処することは非常に難しいでしょう(医療者でも難しいですね)。
特に難しいことは、通院がおよそ月1回であり、病院側もタイムリーな変化に気づいて対処することができない点です。
 このように退院後はどうしても医療の質が落ちてしまいますが、訪問看護を利用することで常に専門の目が入り、質を落とすことなく”再発防止”および”早期発見”を可能とするのです。
 まさに、国が掲げる在宅医療の充実を担っています。

②治療の方針を明確に共有することができる

 利用者様やご家族からよく聞かれる言葉として「診察時間が短いから先生に聞けなかった言えなかった」というフレーズがあります。このフレーズは多にして診察時間が短いからだけではなく、遠慮や面倒を感じて切り出さなかったという理由が存在していました。
 問題となるケースは服薬に多くみられます。「薬の副作用が気になる」「処方変更に納得いかない」等の理由から服薬を自己中断してしまうのです。
 診察で想いを伝えていれば主治医も他の手立てを考えてくださるのですが、その場しのぎの返事になってしまうと治療はうまく進んでいきません。

 訪問看護師は何かあれば細やかに病院側と情報共有を図ります。そのため、自身の想いをお伝えできない利用者様については、疑問や困りごとを報告することができます。
 また、必要に応じて訪問看護師が診察に同席して、治療や生活について相談してくれるステーションもあります

 治療は医師から指示されるだけの受動的なものではなく、自らが治療方針を理解し、選択し、納得しなければ良い効果を生みません。これは支援者も見落としがちな治療の大事な要素なのです。

③病院や地域の支援者も生活状況を正確に把握することができる

 地域包括ケアが掲げる体制には医療や介護、予防のみではなく、生活支援も含まれます。生活支援には、地域住民や役所、警察など医療者以外の方々の力も必要です。
 しかし、これまで周囲との交流がない家庭や、来訪を嫌う方のサポートは実際には大変困難なものです。地域包括支援センターのケアマネージャー様が熱心に取り組んでくださっており、私も何度も協力して打開策を検討してきたところでもあります。

 訪問看護が入ると、その方の体調や服薬状況のみでなく食事や入浴、環境、金銭面などそれまで見えてこなかった生活が見えるようになります。そうすることで、病院は最適な治療を再検討することができますし、ケアマネージャー様など地域の支援者の方々も最適なケアプランを立案、提供することができるようになるのです。
 生活の場に入ることは大変難しいことですが、訪問看護を利用することで介入していくチャンスを作り出し、体調管理以上の効果を生むことが期待できます。

④ご家族の不安も軽減することができる

 訪問看護の対象は利用者様ご本人のみではなく、ご家族も含まれるところに大きなメリットがあります。
 病気を発症すると自分以上に心配しているのがご家族です。
 実際に「何かしてあげられないだろうか」「症状が出た場合どうすればよいのだろうか」との不安も多く聞かれます。

 そのようなご家族の不安もしっかりと受け止め、対応をお伝えしておくことも大事な役割です。特に、ご家族が別でお住まいの方については、状況を定期的にお伝えしておくことで大きな安心につながるでしょう。

 また、医療保険の精神科訪問看護では”家族支援”も可能であり、条件を満たすことで、ご本人はご自宅にいなくてもご家族への訪問対応が可能となります。
 ご本人のみならず、ご家族の不安を取り除きレスパイトの役割もできることは、なかなか他にない強みだと言えるでしょう。

⑤今後、何かあったときに助かる

 周囲から訪問看護の利用を勧められても気が進まない方々に対して、私が利用を強くお勧めするときにお伝えするのがこれです。
 訪問看護師は病気を観察しているのではなく、利用者様ご本人とその家族の生活を見守っています。身体面はもちろんのこと、精神面社会面と3側面からサポートできるのが訪問看護師の専門性の高さです。

 70代のご夫婦。ご主人が退院とともに訪問看護の利用を勧められ、当初拒んでいましたが渋々受け入れていました。その後、奥様が検査入院することになると、寂しさと生活への不安から調子を崩しかけました。しかし、訪問看護師が生活状況から奥様のことまでしっかりと把握してくれていることが安心へと繋がり「来てくれていて本当によかった」と笑顔で話してくださいました。

地域で生活を送るということは、自分だけではなく家族や周囲との関わり、手続きなども出てきます。
 ご家族の不調、役所からのハガキ、インターネットでの登録などでも、混乱してしまいそうなそのときに臨機応変に動ける訪問看護師が有事の際の力を発揮するのです。




以上、参考にしてくだされば嬉しいです!

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