ステーション数の推移
全国訪問看護事業協会の調査によると、2012年、全国に約6300箇所あった訪問看護ステーションの数は、2022年で約14300箇所と、10年の期間に2倍以上の増加となっています。2002年〜2012年の10年間では、約1000箇所の増加であったことを考えると近年訪問看護ステーションが全国で次々と増えていることが分かります。
熊本県では、最新のデータ(総務省によるダッシュボード)によると、2020年で238箇所。2010年に104箇所であったところから、やはり2倍以上の増加となっています。
特に熊本は、全国で14番目に訪問看護ステーションが多く、人口10万人あたりに対するステーション数でも全国平均を越えています。ちなみに、1位は大阪、2位は東京、3位は愛知、6位に福岡となっています。
そして、2023年8月時点で厚生局熊本事務所に届出されているステーションの数はなんと352箇所にまで増えています。
都道府県 | 令和4年4月1日の稼働数 | ||
1位 | 大阪 | 1634 | |
2位 | 東京 | 1427 | |
3位 | 愛知 | 916 | |
4位 | 神奈川 | 885 | |
5位 | 兵庫 | 779 | |
6位 | 福岡 | 750 | |
7位 | 埼玉 | 629 | |
8位 | 北海道 | 586 | |
9位 | 千葉 | 512 | |
10位 | 京都 | 374 | |
11位 | 広島 | 349 | |
12位 | 静岡 | 276 | |
13位 | 岐阜 | 272 | |
14位 | 熊本 | 267 |
訪問看護が増えている理由
結論
1.深刻な高齢化により、医療介護需要のさらなる増加が見込まれ在宅医療を支える訪問看護の需要が高まっている。
2.我が国における医療費増大の課題に直接アプローチできることが期待される。
3.地域包括ケアシステム構築を進めるうえで、在宅医療の充実に係る要であり、地域医療構想を推進する上でも重要である。
1.世界に例をみない高齢化
問題とされてきた日本の高齢化。65歳以上が人口の21%以上を占めると「超高齢社会」に位置付けられますが、我が国は2007年にこの21%を超えて「超高齢社会」に突入しました。そして、総務省は2022年の65歳以上の割合を「29.0%」と発表。団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は、国民の医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれており、在宅医療を支える訪問看護の需要が年々高まっているのです。
熊本県では2021年、65歳以上の割合を「31.9%」で「県民の3.1人に1人以上が65歳以上の高齢者」と発表。また、その半数以上が75歳以上という状況になっており、特に高齢化が深刻な問題となっています。
2.医療費の増大
日本の国民医療費は2013年から40兆円を超え、2022年のデータで「42兆円」となっています。
熊本県は「6900億円」で、九州では福岡県に次ぐ2番目の高さです。医療費は人口の増加や、高齢化、医学の進歩などにより自然に増えるものであり、先進諸国ではどの国にも言えることであるため、自然な増大は我が国だけの問題ではありません。
それでも医療費の増大は財政を圧迫しているため対策が求められていることに違いはありません。医療費増大における我が国の問題点には、在院日数(入院期間)の長さ、受診回数の多さ、薬剤使用量の多さなどがあげられます。
近年、平均在院日数は見直しが進み短くなりましたが、いつでもどこでも何度でも病院受診ができる国民皆保険制度は、メリットでありながらも受診や検査回数が他国と比較して大変多い状況を生んでいます。
また、薬剤については、他国と比べて価格自体が非常に高く設定されており、自宅に大量に眠る残薬問題も深刻です。
訪問看護が自宅に向かうことで、疾病の早期発見、病状の悪化防止を図り、処方薬の整理や病院への連絡なども可能となるため医療費増大の課題に対して直接アプローチして貢献することが期待されています。
3.地域包括ケアシステムの構築
国民の医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれるなか、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもと、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築が推進されています。
地域包括ケアシステムの構築を進めるうえで訪問看護は在宅医療の充実に係る要であり、通院や入院中の医療の質を落とさずに地域で生活していくための中核を担う存在なのです。
なかでも、厚生労働省が在宅医療の提供体制に求められる機能に以下をあげています。
- 退院支援
- 日常の療養支援
- 急変時の対応
- 看取り
病院や地域との連携を図り、確かな知識と技術で生活を、そしていのちを守り、見届ける。訪問看護はこれからの社会に必要不可欠な存在であり、熊本県としても、訪問看護は地域医療構想を推進する上でも重要と言われているのです。
以上、参考にしてくだされば嬉しいです!